東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

医療における組織文化と改革

医療保健学部 看護学科
宮本 千津子
大学院看護マネジメント学では「組織文化」をテーマとした授業を行います。組織文化はメンバーの行動を導くので、文化の質担保と改善はマネジメントの役割です。しかし文化には理念や方針のように目に見えるものと、判断や行動の基準になっていても表現されていないもの(暗黙の文化)があり、把握は容易ではありません。
 
そこでCameronは、組織文化を可視化するため組織に内在する4つの価値観(Group/clan:仲間意識を大切にし伝統を重んじる、Developmental/adhocracy:臨機応変であることを大切にし変革志向が組織をまとめている、Rational/market:合理的で成果を重視し目標に向かい競争的であることを評価する、Hierarchy:階層性を重んじ公式のルールにより業務が進むよう管理されている)を枠組みとして示しました。これらは相互に競合するものなので、自組織の文化を4つの価値の合計が100点になるように点数化し傾向を表します。
 
これを用いて組織文化が業務改革どう影響するかを明らかにしたアクションリサーチ1)があります。複数の病院が参加し、利用者に選ばれる病院をめざして改革を行いました。結果を一部示しますと、上記の4価値が同程度に大切にされていたA病院では、職位制度の刷新を含む大幅な改革を行った結果、看護師ばかりでなく患者の満足度も上昇しました。一方、MarketとHierarchyを重視していたB病院では、変革は小規模でありましたが看護師・患者ともに満足度が低下しました。研究への参加は任意であり、改革内容も病院が提案したものであったにもかかわらずこのような違いが生じたのは、元々の組織文化の違いが影響したと考えられます。
 
この結果から言うべきことは、組織文化には良いものと悪いものがあるということではありません。得るべき示唆は、組織を変革しようとする際にはその文化に十分留意し価値観を活かした方略を導入する必要があるということです。
 
大学院には管理的役割を担っている看護職者も多く、授業では自組織の特徴を思い浮かべながら組織文化を評価し、効果的な方略を検討しました。皆さんの組織ではいかがでしょうか。
 
1)Jones,KR.:Organizational Culture and Work Redesign:JONA30(12),604-610,2000
 
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