東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

早起きと朝食のすすめ

医療保健学部 医療栄養学科
学科長 小西 敏郎

当大学では毎年3月に、学生へのアンケートによる学生の修学状況の実態調査を公表している。その「学生の学修に関する実態調査報告書(平成26年度)」を見て驚いた。なんと医療栄養学科の学生の30.3%が毎日の平均睡眠時間が5時間以下である。そのうち3時間以下と答えた学生は4.5%、そして数名の学生は平均睡眠時間が1時間未満と答えている。この数字は医療情報学科や看護学科の学生も大きな違いはない。本当にこんなに短い睡眠時間で学生時代を過ごしているのだろうかと疑いたくなる数字ではあるが、十分な睡眠をとっていない学生が多いことは間違いないだろう。

自分の学生時代を振り返ると、宇津井健さんCMのサントリーレッドの水割りで、深夜まで議論することはよくあったと思う。また御殿下グランドのクラブ練習の後は、「今夜は徹マンしよう」と4人が集まって、翌昼まで雀卓を囲んで体力勝負を競い合うこともよくあった。しかしその翌日は、授業中に睡眠時間をとり戻していたので(笑い)、平均睡眠時間が3時間以下と答えられるような自信は自分にはない。アンケート回答の真偽はともかく、きちんと睡眠時間はとるべきである。

1日の生活リズムは概日(がいじつ)リズム(circadian rhythm)といい、ひとでは大脳の前頭葉の視交叉上核にある神経細胞が主時計遺伝子をもっていて調整している。この主時計遺伝子の1日周期は24時間ではなく25時間とされている。年齢とともに少しずつ短くなるそうだ。それでも24時間よりは長いとされる。68歳の私でも24.3時間が主時計遺伝子の1日らしい。この主時計の情報は交感神経とホルモンで、肝臓や小腸など全身の末梢時計に伝播されて、毎日の生活リズムが生まれる。毎朝、太陽の明るい光で主時計遺伝子が24時間の日周リズム(daily rhythm)に調整されている。そして主時計遺伝子の影響を受けながら、毎朝の朝食で末梢時計遺伝子は1日24時間の生活リズムで代謝や栄養を変動させている。主時計と末梢時計の同調のためには早起きと朝食が必要なのである。

十分な睡眠をとらないと主時計遺伝子の機能は発揮されない。日が暮れて暗くなると松果体からメラトニンが分泌されて眠くなる。メラトニンは睡眠だけでなく、免疫細胞を賦活したり、抗がん作用もある。そして朝の青空は網膜色素メラノプシンで感受されて心身が活性化される。夜はメラトニンに任して眠り、朝は太陽の光で起きるのが健康に良い。

35年前に女子栄養大学の香川靖雄副学長が自治医大の学生に対する調査から、朝食が脳の活動の重大なファクターであり、朝食摂取で学業成績がよくなることを再現性のある結果として報告している。その後、文科省も「早寝・早起き・朝ごはん運動」を取り上げている。

日本と米国や中国の高校生では就寝時間が異なる。米国や中国は22-23時の間にピークがあるが、日本の高校生の就寝時間は0-1時が最も多いとの報告がある。日本の都会の夜の明るさで深夜まで起きる中高生や大学生が増えていることが、世界的にみて最近の日本の児童・学生の学業成績の不振につながっていることも推測されている。

学生だけではない。朝食をとらないと労働衛生上も問題である。たとえば、自動車運転シュミレーターを使って同一人間で実験をすると、車のスピードが低い間は差がないが、時速70Kmを越えると、朝食欠食群では摂食群の5倍の事故率になる。飲酒運転だけでなく、朝食欠食運転を道路交通法違反で取り締まる時代になるかもしれない。

毎日とはいわないが、早寝・早起き、そして朝食をとる学生生活をすごしていただきたい。

 
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