東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

現象の切り出しと情報利用

医療保健学部 医療情報学科
比江島 欣愼

 医療現場において、患者の様子を如何に正確に把握するかは、最適な医療サービスを患者に提供する上で最も重要です。患者の様子は診察や検査などを介して可視化され患者情報となります。近年の検査技術の向上などによりその情報の精度は高まっていますが、果たして患者の様子のすべてを情報化できているのでしょうか?どう頑張ってもその様子の一部分を情報として切り出しているに過ぎません。医療サービス決定の際には、切り出された情報のすべてではなくその一部だけが利用されることになります。この様に医療現場では限られた情報に基づいて判断、行動がなされているのが実情です。

 一方、治療の開発に目を向けると、一人の治療対象患者に治療が効くかということより、治療対象患者全体で何人の患者に治療が効くか(有効割合)などが注視されます。よって、すべての治療対象患者に治療を実施し、患者情報を集めて有効割合などを検討したいところですが、多くの場合、治療対象患者数は相当な数になるためすべての患者について治療実施、情報収集はできません。治療による患者全体の様子の変化を限られた数の患者の情報で切り出して有効割合などを検討することになります。

 現象の切り出しとして「患者の様子(対象に起きている現象)をどのような情報で切り出すか(項目による切り出し)」と「患者集団の様子(集団に起きている現象)をどのような患者で切り出すか(対象による切り出し)」の2つを紹介しました。情報を利用して適切な判断、行動、検討を行うためには、前者については「必要な情報(項目)が欠落していないか?」に、後者については「患者(対象)が偏っていないか?」に注意する必要があります。

 近年、機械学習や深層学習によるAIが注目されていますが、AIの初期の学習には大量の情報(ビッグデータ)が使用されます。適切な判断、行動、検討ができるモデルを構築するために、豊富な項目数と大量の対象を学習データとして用いることで、前出の2つの注意点に対応するわけです。しかしながら使用するビッグデータに必ず必要な項目が含まれている保証はありませんし、対象が偏っていない保証もありません。どのようなデータを使用してAIに学習させるかは人が決めなければなりません。AIは、これまで人が行っていた学習の量を遙かに超える量の学習をしますが、人と同じように誤った学習や不十分な学習をすれば、誤った判断、行動、検討をします(自己学習することでモデルを改善できる状況もありますが・・・)。AIに限らず情報や情報技術の適切な利用には、それに対する人の十分な知識と理解が必要になることを最後に強調しておきます。

 
 
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