東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

たかが姿勢、されど姿勢

東が丘・立川看護学部 看護学科
竹内 朋子

 姿勢は結構大切です。その理由を二つあげます。

 第一に、「よい姿勢は健康によい」ということです。よい姿勢は、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎から成る脊柱が、緩やかなS字カーブ、つまり生理的弯曲の状態であることを指します。加齢とともに姿勢を保つための筋力が低下したり、パソコンやスマートフォンを前傾姿勢で長時間操作する生活を続けることなどによって、猫背や反り腰などの不自然な姿勢になりがちです。整形外科医Nachemson(1931-2006)は、直立姿勢のときに腰部にかかる負担を100%としたとき、前傾姿勢の立位では150%、前傾姿勢の座位では185%までにも増大することを指摘しています。不自然な姿勢は、肩こり、頭痛、腰痛だけでなく、内臓の不調やうつ症状の原因にもなります。もしもこれらの慢性的な症状に悩まされていたら、姿勢を見直すだけで軽減するかも知れません。

 第二に、「よい姿勢は他者によい印象を与え、自分自身もよい気分になれる」ということです。私はときどき趣味で歌舞伎を鑑賞しに出掛けますが、歌舞伎役者は役柄に応じて姿勢を見事に七変化させます。翁や媼、病気の人では思い切り前かがみの猫背、悪代官はふん反り返った大股歩きです。一方で、「正義、誠実、美、聡明、溌剌」など、ポジティブなイメージ設定の役柄は、必ずよい姿勢で登場します。これは、姿勢がその人の内面や心情を反映するという原理を応用しているもので、台詞を発するまでもなく、役者が観客に己が何者たるかのイメージを姿勢で示しているわけです。そして、姿勢は他者からの印象に作用するだけでなく、自分自身の気分にも影響します。前傾姿勢では視点が必然的に下降し、内向的でネガティブな気分を増強させることになり、よい姿勢は視点が自然に「前向き」になりますから、ポジティブでいきいきとした気分が生まれてくるはずです。

 よい姿勢のポイントは、立位でも座位でも、脊柱の土台である骨盤を意識することと言われています。骨盤が前後に倒れた状態では、その上に乗る脊柱全体が歪み、不自然な姿勢になってしまいます。骨盤が前後左右に傾くことなく、ヨガやピラティスで言うところの「骨盤が立つ」状態で安定できていれば、自然に脊柱が生理的弯曲を描くようになります。よい姿勢は身体本来の生理的な状態です。姿見の前に立って、一度ご自分の姿勢をチェックしてみてはいかがでしょうか。

 
 
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