東京医療保健大学
Menu

ヘルスケアコラム

偉大なる発明家たちによる身近な発明品

東が丘・立川看護学部 看護学科
佐藤 潤
皆さんは自分が一日何歩くらい歩いているか認識していますか?日本人の歩数に関するデータを経時的に収集している国民健康・栄養調査のデータによると,日本人の1日の平均歩数は男性が7099歩,女性が6249歩となっています。この歩数に関するデータは平成元年から計測されていますが,ここ数年漸減傾向にあり,高齢化が進展する今後も減少することが見込まれています。この歩数のデータは毎年対象者の方に1日間だけ歩数計を装着してもらって計測しています。この歩数のデータは賛否はあるものの日本国民の運動・身体活動の代表的な指標として広く活用されています。
 
このような重要な指標を計測する歩数計のアイデアを世界で最初に考案した人は,レオナルド・ダ・ヴィンチだと言われています。ダ・ヴィンチのアイデアはその後,ヨーロッパで1700年頃に実用化されますが,ヨーロッパ製の歩数計を改良し,日本で最初に歩数計を作成したのは平賀源内だそうです。驚くことにこの源内の作成した歩数計(当時は量程器と呼んでいたそうです)は,腰に装着し機器内の振り子で計測するタイプだったそうで,現在の歩数計とメカニズム自体は大きく変わらないのです。さらに,この量程器は伊能忠敬による日本初の測量時にも使用され,日本の正確な地図を作成するときに大いに活躍したそうです。
 
そんな歩数計ですが,科学の進歩とともに計測精度の向上はもとより,大きな2つの変化がみられています。ひとつ目は,装着位置の変化です。現在は腰に装着しないタイプも普及しており,ポケットやカバンに入れておくだけで計測できるタイプ,腕時計のように手首に装着するタイプ,首からぶらさげるネックストラップタイプなどもあり,一見すると歩数計だと気づかないようなファッショナブルな機器が増えました。ふたつ目は付加機能の追加です。現在の歩数計は,多くの場合加速度センサが搭載されており,動きの強さも感知できるようになっています。そのため,同じ1歩でも走った時の1歩なのか,歩いた時の1歩なのか判別できるようになっています。よって,これらの歩数計ではより正確な消費エネルギー量や脂肪の燃焼量の算出もできるようになっています。また,最新の機器になるとパソコンやスマートフォンとリンクすることができ,自身の生活習慣をトータルに経時的に管理する機能が付いています。
 
そして,昔からのどんな歩数計にも付いている優れた機能が装着による歩数の増加。歩数計は装着しているだけでも歩く意識の向上につながり,装着している人は未装着の人と比較すると1日2000歩ほど歩数が増加することが研究でも明らかになっています。さらに,歩数計の装着に加えて記録を付けることはさらなるモチベーションの維持・向上につながると言われています。実際,「加速度センサを内蔵した歩数計の配布に加えて動きの強さを意識させる記録用紙を一緒に配布することで強度の高い活動量が増加すること」が本学学生の卒業研究でも明らかになっています。
 
このように,歩数計は皆さんの健康を改善させる可能性を秘めた発明品なのです。皆さんも偉大なる発明家たちによって形作られたこの身近な発明品を健康のために身につけてみませんか?
 
このページの先頭へ