東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

看護師の多重業務に思うこと

立川看護学部 看護学科
櫻井 敬子

2024年4月から施行される医師の働き方改革として医師以外の医療従事者へタスクシフト・タスクシェアが示されました。タスクシフトは医師が担う業務の一部を看護師や薬剤師などの他職種に任せることであり、タスクシェアとは医師の業務を複数の職種で分け合うことを言います。
施設の中の職員で最も多い看護師の仕事はどうなるでしょうか。ある研究で、看護師の業務を観察したところ、1時間に70以上のタスクをこなしているという調査結果があります。看護師がいかに多くのタスクを行っても患者の安全が確保されなければ意味がないのですが、看護師は60分の中にどれだけ業務のタスクを押し込めているのでしょうか。自らの臨床経験でも、看護師同士の情報交換のためのコミュニケーション、医師の指示、検査・処置の準備なども指定の時間に間に合わせるために複数の看護業務のタスクを同時に「ながら」、「後回し」、「誰かに依頼」のいずれかの目まぐるしい選択を行っていました。それが上手くできたと感じた際には、自分の1日の業務の達成感もあったように思います。
しかし、新人看護師の時代には慣れない仕事の環境と、看護業務のタスクの多さで、時間との闘いのようになり、1つ1つの看護の未熟さに精一杯になっていました。

2023 年 の厚生労働省の看護師等(看護職員)の確保を巡る状況において、「病院看護実態調査」では、新人看護師の離職率は新卒採用者の離職率は 10.3%、それまでの7~8%台の離職率から増加しています。この要因の1つに新型コロナ感染症の影響もあるようですが、20代では他の年代と比較して「自分の健康(主に精神的理由)」が多いといった特徴があることがわかっています。
医師の業務のタスクが新人看護師の業務に直接移行することはありませんが、一部の看護師が医師のタスクを担うことで、看護師の業務も少なからず影響を受けることになるでしょう。看護師の働き方も変わっていく中で、看護師の業務も効率化が求められることでしょう。看護師の業務は、日ごろから看護師の働き方の見直しが必要と言われ続けていますが、効率化のために、看護師が精神的に追い詰められることがないことが大切です。

新人看護師を送り出す大学の看護基礎教育では1つ1つの確認をしっかりと行うことを基本として指導していますが、臨地実習の場面で、看護師や教員が患者ケアとともに学生指導をする姿は、患者や学生からいったいどのように映っているのでしょうか。慌ただしさだけが映ってはいないか心配になりますが、新人看護師に看護のタスクを伝えるとき、何を大切にしているのか気になる季節がやってきます。学生時代に教員としてできることはないか考え続けたいものです。

引用
厚生労働省 看護師等(看護職員)の確保を巡る状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001140978.pdf

教員データベース:櫻井 敬子⇒

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