東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

育休だけじゃない

立川看護学部 看護学科
堀田 昇吾

先日、息子と二人で虫捕りに行った帰り、近所の方に、「おっ! お父さん一人でお子さん連れて頑張ってるね。イクメン頑張れ!」と声をかけられました。皆さんはこの「イクメン」と聞いてどんな人を思い浮かべるでしょうか。多くの方は、育児休業(以下育休)制度を利用して育児に取り組む男性をイメージされるのではないかと思います。2019年のデータでは、育休を取得する男性の割合は、2009年度に比べて2019年度の約4倍になりました。しかし、まだ7.5%です。女性の83.0%に比べると圧倒的に少ないことがわかります1)。こういった背景を踏まえて、2021年育児・介護休業法が改正されました。男性の育休が分割して取得できるようになるなど、これまでよりも男性が育休を活用しやすいようになってきています。

このように男性が育休を取得しやすい制度は年々整ってきており、これからも男性の育休取得率は男性が子育てに関わっている一つの指標として注目され続けると思います。ですが、実は育休以外にも男性の育児に役立つ制度は複数あります。例えば、就業時間を短くする「短時間勤務制度」、就業規則で定められている時間以外での労働を制限する「所定外労働の制限」があります。また企業等によっては始業時刻と終業時刻を変更できる「フレックスタイム制度」、ベビーシッターなどを依頼する際の費用等を補助する「育児に要する経費の援助措置」、「在宅勤務・テレワーク制度」などがあります。2019年度では短時間勤務制度・所定外労働の制限を利用した男性はそれぞれ4.6%と2.0%でした。一方で「フレックスタイム制度」や「育児に要する経費の援助措置」、「在宅勤務・テレワーク制度」は設置している企業等が少ないですが、それらを利用した男性はそれぞれ24.3%、30.9%、28.7%と短時間勤務制度等に比べて高いです。男性の育休取得率に比べて、このような育休以外の制度の利用率が注目されることはあまりありません。しかし、子育てを陸上競技に例えると、短距離走ではなく長距離走の側面が強いです。つまり、長く続く子育てをいかに強弱つけながら走りきるのかがポイントなのだと思います。そのためにはこういった育休以外の制度にも広く目を向け、長く走り続けられる働き方を男性も考えていく必要があると思います。

我が家では、長男の出産時に妻から「育休は取らなくて良い。ただし、毎日なるべく早めに帰宅して欲しい。」 と言われたことがきっかけで、育休を一度も利用したことはありません。理由はやはり、“子育ては続くから”です。出産後1年ほどは確かに何かと大変ではありますが、その後も持続可能なスタイルで仕事と家庭のバランスを取っていく必要があります。そのためには私が育休を取らず、働き続けながら家庭とのバランスを調整していくスタイルが良いと考えました。今、妻と振り返っても、この判断に後悔はありません。我が家にとってはこの選択が良かったのだと思います。もちろん、この選択ができた背景には、夫婦の協力だけではなく、大学や所属領域の先生方の理解もあって、フレキシブルに働かせてもらっているおかげだと思います。

私の家庭は一つの例でしかありませんが、”子育ては続く”というのは全ての子育て家庭に当てはまると思います。そして昭和・平成の時代に比べて令和の時代では、多くの家庭が多様な働き方や育児の考え方をもって子育てを行うようになるはずです。そのような時代において、子育てを続けていくためには育休だけでなく、上述した育休以外の制度を男性も活用していくことが重要です。色々な制度を活用し男性も継続して育児が行えれば、男性だけでなく、女性も、子どももみんなHappyに過ごせるのではないでしょうか。

色々な分野で多様性を認め合う重要性が語られています。子育てにおいても様々な価値観を持った家庭が認め合えると、子育ても継続しやすくなると思います。男性の子育てはそんな子育ての継続性のキーになるものであり、イクメンが目指すところだと思います。

私も色々なサポートを活用しつつ、来年からも継続して子どもとクワガタを捕りにいけるイクメンであり続けられるようにしたいと思います。

1) 厚生労働省(2020), 令和元年度雇用均等基本調査の結果概要. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r01/07.pdf

教員データベース:堀田 昇吾⇒

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