東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

放射線治療の今

東が丘・立川看護学部 看護学科
小野 孝二

放射線治療は、手術、化学療法と並ぶがんの治療法のひとつです。アメリカ、イギリス、ドイツなどの先進国では、がん患者さんの60%以上に対して放射線治療は行われています。しかし、日本ではがん患者さんに対する放射線治療の割合は30%程度と低い状況です。その理由のひとつとしては、患者さん、あるいはそのご家族は「放射線治療は、終末期のがんに対する治療」と誤解していることが考えられます。放射線治療の適応範囲は、がんの根治から症状の緩和にまで及びます。

正常な組織へのダメージの軽減化を目的として、がん病巣に対して多方向から放射線を集中して照射する定位放射線治療法は広く普及しています。さらに、重粒子線や、陽子線を使って、がんの病巣部にピンポイントで放射線を照射する治療装置や、密封した放射線物質を組織内(前立腺や舌など)に埋め込む治療法なども次々と開発されております。また、手術療法や抗がん剤との併用療法によって患者さんのQOLを向上するためのさまざまな治療の工夫は図られております。

乳がんの治療では、術後の整容性を保つことが女性の患者さんのQOL向上の視点からは重要であり、乳房温存手術を希望される患者さんは増えております。手術での乳房の切除範囲をできるだけ小さくし、手術後に放射線治療を行うことにより治療効果は高められております。

放射線治療は高い線量を患者さんの病巣部に照射するため、皮膚や粘膜に放射線障害などの副作用が発生し、重症化することもあります。副作用に対する予防的ケアや緩和ケアは看護職に求められる重要な役割のひとつです。さらには、がん治療に伴う外見的変化に対応したサポート支援、アピアランス(外見)支援の重要性は認識されはじめ、看護職のきめ細やかな観察・支援は必要とされております。

がんの放射線治療の臨床現場では、患者さんの副作用をできるだけ少なくし、副作用に対する不安に専門的な視点から患者さんと向き合う「がん放射線療法認定看護師」の活躍は期待されております。本学では、平成30年から、「がん放射線療法認定看護師」の養成を始めており、この3月に初めての修了生が誕生します。

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