東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

セルフコントロールへの効果

医療保健学部 看護学科
古川 奈緒子

みなさんは、ご自身の自律神経活動を目で見て確認したことはありますか?ストレス社会にある現代において、自律神経系の乱れによる体調不良を訴える方は少なくありません。ご自身での体調管理として、自律神経系を整えるとされている、ヨーガや呼吸法を取り入れている方や、自律神経系を整える音楽や塗り絵などを活用されている方もいらっしゃるかと思います。心も体もリラックスをするというリラクゼーションの大切さという観点から、これらの方法は有用であると考えられます。

自律神経活動は、交感神経と副交感神経の2つの神経系に分かれており、それぞれが異なった作用を持ちます。この2つの神経系は心電図のR-R間隔から数値化することが可能です。そして、この2つの数値は、どちらか一方値が高い、もしくは低いというよりは、互いのバランスが保てている事がとても重要となります。

そこで、実際に周産期にある女性の自律神経系を可視化し、その効果を検証しました。出産直後から産後3か月までの方に縦断的に介入をし、リラックス効果があるとされている呼吸法を用いて、自律神経系を可視化していきます。3か月の間、自身のリラックス状態を体感するという訓練を繰り返し重ねていくと、可視化せずとも、最後にはリラックスを実感としてとらえることができるようになります。また、可視化は、本人の主観的な感覚ではありますが、どのような時に緊張をし、またはリラックスすることができるのかを瞬時に知ることができ、リラックスを体感することからリラックスの実感へと感覚の変容に役立つことが分かりました。出産後、女性のホルモンバランスの変化は著しく、この影響を受けてマタニティーブルーズや、産後うつ病を発症する例は少なくありません。昨今では、産後の自殺率についても取り上げられ、東京都においては、自殺率が産科異常における妊産婦死亡率の2倍の数値となっています。その内訳として産婦の6割が産後うつ病をはじめとする精神疾患を有していたことが分かりまりました。出産後、新たな家族を迎えた喜びや幸せを感じる反面、家族形態の変化による、産後の育児の孤立化は大きな問題となっています。慣れない育児への不安やイライラ、ストレスを少しでも改善し、前向きに育児をしていくためにも、自身で手軽に継続可能な方法で、自律神経系のバランスを保っていくことが必要となります。

私たちは、情報の8割を目から捉えます。目で見て体感したことを「実感」として捉えていくことが重要です。産後のメンタルヘルスの重要性から、身近な方法を使って、自分自身で自律神経系をコントロールしていくことは、育児ストレスへの対応や虐待防止の一助となると考えられます。

ぜひ皆さんもご自身の自律神経系の変化を目で見て、体感し、リラックス状態を実感してみませんか。きっとリラックスできると思いますよ。

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