東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

「今」を創るのは「過去」か「未来」か

立川看護学部 看護学科
小川 賀惠

紀元前の中国の書物のなかに「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。
そのあらすじは、「塞(とりで)に住む老人の馬が逃げてしまったのですが、その馬が駿馬(足の速い馬)を連れて戻ってきました。しかし、老人の子供がその駿馬から落ちて骨折をしてしまいます。ところがその骨折を理由に息子は戦争に兵役にでることを免れ、命が助かった」というものです。これは「災いや不幸は予測できないものである」という教訓を示しています。目の前で起きたことが、悪い結果をもたらすもののように思えても、実はそうではなかったり、その逆であったりというものです。

皆さんは、「今」を創っているのは、これまで積み上げてきた「過去」だと思いますか?それとも、この先に広がっているであろう「未来」だと思いますか?
答えは一つではないと思います。いろいろな側面から物事を見てみると、新しい発見があるものです。
「あの辛い経験があったからこそ充実した今がある」と思うことがあるとします。これは、過去の積み重ねが今を創っていると捉えることができます。一方で、辛かった過去が、辛いだけのものではなく、充実した今によって「意味」(捉え方)が変わったとも考えることができます。
「人間万事塞翁が馬」の言葉のように、その時の出来事の意味や価値は、後になってみないとわからないことの方が多いのではないでしょうか。
生きていれば、「ああしておけばよかったな」「もっとこうしておけば今はもうすこし違ったのかな」と思うことは数えきれないと思います。
そんな時には、“未来によって「今」の意味付けがかわる”、“過去は変えられないが、未来は変えられる”という側面から物事を捉えて考えてみると、今なにをすべきかが見えてくるかもしれません。

「苦手だな」「不得意だな」と思うことにも、是非チャレンジしてみてください。「迷ったときはキツいほうを選ぶ」(高濱,2019)と、やりきったあとに自信が付き、次のチャレンジにつながり、「キツいこと」に肯定的な意味づけがされていくのではないでしょうか。

皆さんは、小学生の頃よりも、今が速く感じませんか?それは「ジャネーの法則」が関係しているといわれています。この法則は「人生のある時期に感じる時間の長さは年齢の逆数に比例する」というものです。つまり、
6歳の人は1年間を1/6≒1.67の長さで感じているとすると、
60歳の人は1年間を1/60≒0.017の長さで感じているというものです。
ここからわかることは、皆さんの未来は、皆さんが思っているよりもずっとスピード感をもってやってくるということです。さあ、今日から、今から、できることから、「今の意味」を豊かにするために取り組んでみませんか。
余談になりますが、我が家には愛猫がいます。商業的に取り扱われていたところを保護され、譲り受けました。我が家に来たときはまだ3歳でした。これまでの苦労や辛い体験を変えることはできませんが、これからもたくさんの愛を注いで「この猫生も悪くないな」「生まれてきてよかったな」と少しでも感じられるような「今」を創っていけたらと思っています。

引用:
高濱正伸(2019のなかルールブック, 日本図書センター, 東京.
語源由来辞典. https://gogen-yurai.jp/saiougauma/
時間をデザインするメディアcaroa times. https://caroa.jp/times/glossary/Janet

教員データベース:小川 賀惠⇒

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