東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

1日1杯のお酒は体にいい?!

医療保健学部 医療栄養学科
酒井 理恵

「1日1杯なら、お酒は毎日飲んでも問題ないでしょうか?」ここ数年は、コロナの影響あり、友人や同僚、家族とも楽しくお酒を飲む機会が減りました。しかし、それまでは私も多少お酒を嗜むため、また管理栄養士であることから、このような質問をよくされていました。その回答は、「お酒は適正飲酒量を食事しながら飲むとよい効果も期待できます。ただし、適正量は個人差があるため注意が必要です。」

皆さんは、「酒は百薬の長」という言葉をご存知かと思います。この言葉の起源は、中国では約二千年前に酒と塩・鉄を国の専売とする政策が行われ、その際に「税金を多く集めるためのキャッチフレーズ」として作られたという記録が残っているそうです。日本では「徒然草」の一節に、「酒は百薬の長と言うけれど、多くの病が酒より生じている」というように、デメリットとして記されています。つまり、いずれも医療からの言葉ではありません。さらにWHOでは、「アルコールの有害な使用は、すべての死の3.8%を占める」ことから「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」というものがあるほど、アルコールの適正量での摂取を訴えています。

アルコールの代謝能力は個人差があり、適正量は性別や体重、生活環境などによっても違いますが、純アルコール量20~25g程度と考えられています。では、適正量とはどれくらいでしょうか。お酒の種類と量を表にまとめました。お酒は、その種類により含まれるアルコール濃度や純アルコール量が異なることを知っておきましょう。日本酒では1合程度、ビールでは中瓶1本(500ml)程度が適正量です。したがって、1日の飲酒量は、この「ほろ酔い気分」になるくらいの量にとどめることが重要です。

適正量の飲酒は、楽しい気分や食欲を増大させ、緊張感やストレスを緩和します。また、適正量の飲酒の習慣がある人は、お酒をまったく飲まない人や大量に飲む人に比べて、死亡率も低くなるとされています。少量の食前酒は、胃液の分泌を促します。しかし、空腹で多量に飲むと、胃腸を強く刺激し、粘膜を荒らすうえに、アルコールは吸収されやすく、急激に血中アルコール濃度が上昇することで、様々な障害が起こりやすくなってしまいます。したがって、飲酒をする際は、肉や魚、卵などたんぱく質や脂質を含む食品を一緒に摂り、アルコールの吸収ペースを緩やかにすることで、アルコールと胃粘膜の接触を緩和し、胃腸障害などを予防することが重要です。一方で、少量飲酒の習慣が腹部内臓への脂肪沈着やインスリン抵抗性、高血圧、発癌、脳への影響などの原因となるとされています。

飲酒は、その量や飲み方によっては“薬にも毒にもなる”ということを理解した上で、コロナが落ち着いた頃に、また楽しみたいものです。

表 お酒の種類と量

教員データベース:酒井 理恵⇒

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