東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

「畳の上での最期」について考える

医療保健学部 看護学科
大金 ひろみ

住み慣れた家で、地域で最期を迎えることは、なかなか難しい現状にあります。人生の終わりをどこで過ごしたいか、どこで最期を迎えたいかという調査では、6~8割の人が「自宅」と回答していますが、7割以上の人が病院で最後の時を過ごし、亡くなっているのが現状です。疾患によっても多少の差が見られ、がん患者の場合は8割以上が病院で最期を迎えています。

高齢社会を反映して、人生の終わりについて考える「終活」がブームのようになっており、100万冊以上を売り上げているエンディングノートもあるようです。このノートの一部には、「病気や介護が必要になったらどうして欲しいか」を記載するページもあり、「これを書いたから安心だ」と思っていらっしゃる方がいるかもしれません。しかし、それほど簡単ではありません。例えば、人工呼吸器や心臓マッサージだけが「延命治療」ではありません。どのような処置や治療が「延命」にあたるかは、その時の状況によって異なり、「延命治療」かどうかの判断が難しい場合もあるように思います。

エンディングノートに書いておくことも必要ですが、自分だったらどうしたいか、どうして欲しいか、普段から家族や通院先の専門職に話しておくことが、とても大切です。本人の希望と実際の療養・死亡の場所の一致は、家族と一緒に話し合ったか、医療従事者との話し合いが十分だったかが影響すると言われているからです。また、今、住んでいる地域で「住み慣れた家で過ごしたい」という願いを現実のものにしてくれそうな在宅医、看護師、介護支援専門員、リハビリテーションや介護等の専門職のいる在宅ケア機関がどれだけあるのかということにも関心を向けておきましょう。中学校区ごとに設置されている「地域包括支援センター」へ行くと、これらの情報が得られます。あるいは近所の「訪問看護ステーション」で、自宅で最後の時を過ごす人たちを、誰が、どのように支援しているか、そのステーションでは年間何人くらい自宅で看取っているか尋ねてみてください。納得のいく説明を聞くことができたら、そこでは在宅での緩和ケアが行われています。見知らぬ人でもじっくり話を聞いてくれたら、その看護師は、きっと最期のときもあなたやあなたの大切なご家族を丁寧にケアしてくれることでしょう。

緩和ケアは、自分の家でも受けられます。緩和ケアの定義には、「生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える。死を早めようとしたり、遅らせようとしたりするものではない」という一文があります。「延命治療」を希望しないという考え方と共通するのではないでしょうか。在宅看護に関わる看護師として、住み慣れた自宅、地域で過ごすことを希望する方々とそのご家族が安心して過ごせるよう、その人の日常生活と看取りを多職種とともに支援できる看護職を少しでも増やせたらと思っています。 

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