東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

体調のバロメーター体温測定の歴史

医療保健学部 看護学科
横山 美樹
寒くなってきましたね。これからの季節は風邪やインフルエンザ等に気をつけなくてはいけなくなりますが、皆さんは普段「風邪かな?体調悪いな」と思われた時はどうされますか?まず体温を測ることをしませんか?体温計は、どこの家庭にもある最も身近な医療機器の一つだと思いますが、今回その歴史をご紹介したいと思います。
 
古代から病人の熱には注目されており、「医学の父」とも言われている「ヒポクラテス(BC.460~370頃)」は、自分の手を使って患者の体温を測っていたそうです。ちなみに、看護の「看」という字は「手を目の上にあてた」形を表し、これは病人の額に手を当て発熱の有無を診ている状況を表しています。
 
最初に体温計を発明した人は、イタリア人のサントリオ・サンクトリウス(1561-1636)と言われていますが、体温と病気を関連づけて考えるようになったのは18世紀に入ってからで、ウィーンやパリの医師達の間で病人の体温の測定が行われるようになりました。定期的に患者の体温を測ることの重要性を提唱したのはドイツのカール・ヴンダーリッヒ(1815-77)で、彼は25,000人の患者の体温を測定し、疾患による熱の変化のパターンを関連付けたと言われています。この時に使われた体温計は、何と長さが30cmもあり体温測定には20分もかかったそうですから、これだけのデータを集めるのはさぞや大変だったことでしょう。その後イギリスのクリフォード・オールバット(1836-1925)が、長さ15cmで5分間の体温計を導入したことから、1860年代後半には病人の体温測定が一般的になったと言われています。19世紀末の体温計の写真をみるとガラス製の水銀体温計で、日本でも長くこのガラス製の水銀体温計が病院でも家庭でも主流でしたが、最近ではより安全な電子体温計にかわりました。水銀体温計では、測定した体温を下げるために強く振って水銀柱を下していましたが、そのような風景は今の若い学生達は知らないでしょうか?測定部位も日本では腋窩がよく使われますが、電子体温計の普及に伴って耳に入れるタイプ(鼓膜検温)も多くなってきました。赤ちゃんや小さいお子さん等じっとしているのが難しい場合にはより短時間で測定できる鼓膜式検温が便利です。
 
このように体温は今や誰でも測れますが、正常体温は個人差も大きく、また様々な生理的要因でも変化します。皆さんぜひ、ご自分の正常な体温を知っておいて下さいね。
 
*引用文献
William&Helen Bynum,鈴木晃仁,鈴木実佳訳:Medicine-医学を変えた70の発見,医学書院,2012,p.116.
 
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