東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

食卓の灯は心の灯

医療保健学部 医療栄養学科
豊田 英敏

 食文化を考えると、「家族団欒」・「食卓」という言葉が脳裏に浮かびます。先人たちの弛まぬ努力と研究のお蔭で、今日安全で豊かな食生活を営むことができます。人は、「食」という行為を通して、生命の保持だけではなく、礼儀を学び、語り合い、励まし合い、微笑みながら、明日への「生きる」道を模索し、夢や希望の実現のために日々歩み続けて来たと思います。
 「食卓」の「卓」は、「高い。机。優れている。」(広辞苑)という意味があるのだそうです。その意味を考えたとき、「食卓」とは、「優れた安らぎのある居場所で、食を通して人が更に前進成長するに欠かせない所」と考えます。しかし、子どもの食生活の現状を見ると「孤食」の割合が年々増加傾向にあります。「子どもと食べ物アンケート調査」(JA全農2000)によると「子どもだけ」19%、「一人で」9.6%であるとの報告がされています。約10人に3人が「孤食」状態なのです。また、朝食を欠食する割合では、「小学生の約10人に1人、中学生の約6人に1人が朝食を欠食することがある」(文部科学省『義務教育に関する意識調査』平成17年度)という報告がありました。このことは、栄養摂取の偏り、肥満、痩身等という身体の健康に関わる課題だけでなく、「食生活は子どもの身体的発達のみならず精神や社会性の発達など、心の成長にも大きな影響を及ぼす」(中央教育審議会答申 平成10年)ことは明らかであると思います。人間の「心」そのものに影響を及ぼしているといっても過言ではないと思います。
 人が生きていくうえで基盤となる「衣」(個性)・「食」(心の形成)・「住」(居場所)です。この中で最も大切な「食」を通して構築される人の「心」の形成が危ぶまれているのです。
 幼き頃の自分を振りかえると、「食卓」を囲んだ、楽しい語らいが心に残っています。辛くとも苦しくとも、「食」を通した楽しい語らいが、「食」を通した家族の愛が、今の自分を支えてきてくれたのだと感じます。
 この「食」に関する課題を解決するために、平成17年度から「教育に関する資質と栄養に関する専門性を併せ持つ職員」(中央教育審議会答申 平成10年)として栄養教諭の創設が制度化されました。栄養教諭は、個に応じた「食」への対応や、「食」を通して「命の尊さ」・「感謝」・「人間形成」等々、まさしく「食卓の灯」は「心の灯」に繋がる指導が求められていると考えます。そして、同答申で「児童生徒の食の大部分は家庭が担っている」と述べているように、家庭における「食」の重要性を働きかけることで、「食」は「心の形成」へと繋げられるようにすることが、食を専門とする栄養教諭に求められているのだと考えます。
 笑顔あふれる子どもの姿、それは「食」の楽しさが醸し出す「心」の笑顔だと思いませんか。その笑顔は周りの人々も優しくしてくれるに違いないと思います。

 
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